ジュラコンとPOMの違いとは?素材特性・用途・選定基準を徹底比較
ジュラコンとPOMの基本的な関係
まず押さえておくべきは、ジュラコンはPOMのブランド名だという点です。POM(ポリアセタール)は樹脂の一般名称であり、ジュラコンは旭化成が製造する代表的なPOM樹脂の商品名です。つまり、すべてのジュラコンはPOMですが、すべてのPOMがジュラコンではありません。
他社製のPOMブランドには、例えば「デルリン(DuPont)」や「テンパル(Celanese)」などがあります。各メーカーは、POMの基本構造をベースに添加剤や共重合による改良を行い、特性に差を出しています。
POMの化学的な基本構造については、POMの物性特性に関して解説で詳しく説明しています。また、POMの規格や性能試験方法はJISに明記されています。
ジュラコンとPOMの違い一覧
以下の表に、ジュラコンと一般的なPOMの特性比較を示します。
| 項目 | ジュラコン(Duracon) | 一般POM |
|---|---|---|
| 製造メーカー | 旭化成 | 各社(DuPont、Celaneseなど) |
| 化学構造 | 共重合POM(コポリマー) | ホモポリマー or コポリマー |
| 耐熱性 | 良好(120℃前後まで安定) | ホモ系は高いが、吸水性にやや難あり |
| 耐薬品性 | 優れる | グレードによる |
| 寸法安定性 | 高い | やや低め(ホモ系) |
| 摩擦摩耗性 | 高耐久グレードあり | メーカーにより異なる |
POMとジュラコンの用途比較
どちらも機械部品や自動車部品、電気・電子分野で使用されますが、ジュラコンは高精度・高信頼性が求められる用途に多く採用されます。
- ジュラコン:精密ギア、軸受け、燃料系部品、カム、コネクタなど
- POM全般:一般機構部品、ローラー、バルブ部品、住宅設備部品など
ジュラコンの加工時の注意点については、POMの加工条件に関して解説で詳しく解説しています。
ジュラコンとPOMの機械的特性の比較
次に、機械的特性を数値で比較してみましょう。
| 特性 | ジュラコン | 一般POM |
|---|---|---|
| 引張強さ(MPa) | 60〜70 | 55〜75 |
| 伸び(%) | 20〜40 | 15〜40 |
| 曲げ弾性率(MPa) | 2600〜3000 | 2500〜3100 |
| 比重 | 1.41 | 1.41 |
このように数値上の差は小さいものの、ジュラコンは加工安定性・表面仕上がり・成形収縮率の均一性に優れ、製造品質が安定している点が評価されています。
選定時のポイントと注意点
POMの選定で迷ったら、まず使用環境と要求精度を基準にしましょう。
- 寸法精度が最優先 → ジュラコン(共重合型POM)
- 高剛性・高強度が最優先 → ホモポリマー型POM
- 高温環境・化学薬品使用環境 → ジュラコンまたはコポリマーPOM
また、POMの熱膨張係数は設計上の重要要素です。温度による寸法変化や加工精度への影響はPOMの熱膨張係数に関して解説で詳しく説明しています。
よくある質問(FAQ)
ジュラコンは、旭化成が製造するPOM(ポリアセタール)のブランド名です。つまり「ジュラコン=POMの一種」であり、POMという汎用名称の中にジュラコンを含みます。他社ブランドとしては「デルリン」などがあります。POMの構造や分類について、詳しくはPOMの物性特性に関して解説で紹介しています。また、JIS規格の詳細はJISで確認できます。
ジュラコンは共重合POMであり、寸法安定性や耐薬品性に優れています。一方、一般的なPOMにはホモポリマー型もあり、高剛性・高強度が特徴です。選定は用途に応じて行うのが重要です。用途ごとの違いについて、詳しくはPOMの加工条件に関して解説で説明しています。標準規格の違いはJISを参考にしてください。
POM選定では使用環境と要求精度を重視します。高精度用途ならジュラコン、高剛性を求めるならホモポリマーPOMが適しています。
まとめ:ジュラコン=POMの中でも品質と信頼性の象徴
ジュラコンはPOMの中でも最も信頼性の高いブランドの一つであり、その均一な品質・優れた寸法安定性は、精密機構部品や耐摩耗用途に最適です。
一方で、他社製POMでも条件に応じて十分な性能を発揮するケースもあります。重要なのは、用途と要求精度に合った材料を選ぶことです。